
長野県立美術館を歩く

善光寺の北側、城山公園の木々にひっそり紛れている長野県立美術館。観光地のすぐそばとは思えないほど静かで、初めて来たときは、え、こんな落ち着いた世界があったのかと軽く衝撃を受けた。建物も控えめで、森の片隅にそっと置いてある小屋のような、遠慮がちな存在感がいい。
ここは作品よりも先に景色が目に入ってくる。美術館というより、自然の中に迷い込んだ感じがして、歩くだけでも気分がゆるむ。
アクセス
実際行ってみると、すごく楽だった。
長野駅の善光寺口からバスに乗って善光寺北で下車。そこから三分ほど歩けばもう到着。もっと迷う予定だったので拍子抜けしたくらい。
土日祝日は、びんずる号というかわいらしい名前のバスが城山公園前まで延長運行していて、より近くまで連れて行ってくれる。
車の場合は駐車場が少し悩ましい。美術館専用の駐車場がないので、周辺の有料駐車場を探すことになる。善光寺とセットで来る人も多いから、停められるところにさっと入る感じで動くのが一番楽だと思う。
長野県立美術館

長野県立美術館という名前は新しくて、もともとは信濃美術館として昭和四十一年に誕生したらしい。令和三年の建て替えで見た目も中身もがらっと変わったようで、昔を知っている人は別物に感じるらしい。
中を歩いていると、建物そのものが作品みたいだなと思う。どこを見ても窓が額縁みたいで、その先に善光寺や山並みが広がる。景色を見てるのか、作品を見てるのか、ちょっと混ざる瞬間があってそれがまた楽しい。

東山魁夷の作品は九百点以上も収蔵されていて、専用館まである。白馬の絵は特に印象強くて、しばらく脳内で白馬が歩き回っていた。撮影禁止なので、記憶力頼み。
アートラボやアートライブラリーもあって、眺めるだけじゃなく手を動かして楽しめるのもいい。旅先で突然何か作りたくなるあの感じをくすぐられる。
いざ善光寺へ

JR長野駅からバスで行くなら、善光寺口から乗って十五分ほどで大門に到着。そこから本堂まで五〜十分くらいで、参道を歩くだけで旅気分がじわっと出てくる。
歩いて行くのも悪くない。駅から三十分くらいで、途中にカフェや老舗の菓子店があって、誘惑だらけの道のり。寄り道しながら行くと、気付いたら予定がどこかに消えている。でもそれが一番楽しい。
車だと長野インターか須坂長野東インターから三〜四十分くらい。駐車場はけっこうあるので、混んでなければすぐ停められるはず。
善光寺とはどんな寺か
宗派関係なく誰でも受け入れてきた懐の深い寺で、千年以上の歴史がある。こういう堂々とした寺がドーンと構えているのを見ると、なんだか安心する。
国宝の本堂は、外も中も重厚感がすごくて、ふらっと来たはずなのに、気付いたら自分の背筋が伸びている。あの雰囲気は反則だ。
そして名物のお戒壇めぐり。真っ暗な回廊を手探りで進むんだけど、これが本当に暗い。暗闇ってこういうことだよね、というレベルで、壁に手を当てながら腰をかがめてゾロゾロ進む姿は誰がどう見ても不審者の列。でも妙に面白くて、最後に光が見えたときの安心感はすごい。600円でちょっとした冒険ができると思えばお得。
歴史を振り返ると、本田善光が本尊を信濃へ持ち帰った話とか、武田信玄が本尊を甲府へ移した話なんかもあって、とにかくスケールが大きい。ことわざの牛にひかれて善光寺参りもここが元ネタだというのがなんとなく納得。


参拝の後は大勧進のお寺カフェへ寄り道して、抹茶とカステラでようやく人間に戻った気がした。

昼ご飯は戸隠蕎麦やまざとへ。戸隠蕎麦は香りが強くて、喉越しもよくて、細めで食べやすい。歴史が長くて、日本三大蕎麦と言われているらしいけど、そんな肩書きがどうでも良くなるくらい普通においしい。

一束を1ぼっちって数えるらしいよ!

まとめ
長野県立美術館は、景色と作品が一緒になって楽しめる気持ちのいい場所だった。すぐそばの善光寺は歴史が深くて、でも堅苦しすぎない空気があって、歩くだけでも楽しい。お戒壇めぐりで暗闇の冒険をして、カフェで休憩して、最後に蕎麦を食べるという流れが意外としっくりきた。
観光地を回った、というより、ゆっくり散歩していたら気付いたらいろんな体験ができていた、そんな一日になった。気楽に歩けて、ちゃんと旅になる。長野はそういう場所だった。


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